アウグストゥス以後、ローマは帝政に移行する。しかし、その帝政は大混乱する。その原因は、アウグストゥス自ら悪い先例を作ってしまったことにある。
アウグストゥスにはユリアという女性以外、自分の子がなかった。そこで、二度目の妻、リヴィアが先夫との間に生んだティベリウスを後継者に指名する。
神とあがめられたアウグストゥス自らこうしたことを行ったのであるから、後に続く皇帝もそれに倣って不道徳なことを繰り返す。もちろん、元老院も抗議はするが、元を辿れば、皇帝との協調は元老院自身が望んだことであり、皇帝制度を否定することは、元老院自身にも責任が及んでくることである。それでは、抗議も緩やかなものにならざるをえない。
ティベリウスの死後、神格化を拒絶したり、クロウディウスが皇帝に就任する際、共和制への復帰を提案してみたりするが、近衛軍団の力を背景にした皇帝権は揺るぎもしない。ようやく、ネロの暴政が行きすぎたときになって、ネロを公敵と宣言することによって、元老院はその存在感を示すことになるが、そこまでが精一杯であった。