では、こうしたキャッシュバランスプランを導入するメリットは、どこにあるのであろうか。最大のメリットは、やはり、退職給付会計導入に伴う退職給付債務の拡大リスクを制御できることではなかろうか。
企業年金としての予定金利が固定されていた場合、市場金利が予定金利の水準の近辺で動いてくれれば、退職給付債務の拡大はそれ程心配することではない。しかし、そのような理想どおりには行かず市場金利は低下したままなのに、企業年金の予定金利が固定されたままであると、そこには格差が生じてくることになり、それは企業年金の債務が拡大するという形になって現れてくる。それは企業年金担当者としては、放置できることではない。
そこでこうしたリスクを回避する方法として、企業年金の予定金利を市場金利に連動して、変動させることのできる企業年金が求められるということになってくる。そうして登場したのがキャッシュバランスプランである。とはいっても、キャッシュバランスプランも確定給付型企業年金である限り、退職給付債務の発生という問題は残されたままである。
しかしそれも、予定金利が固定したまま、市場金利の変動に無策であった時に比べ、少なくとも、予定金利が市場金利か乖離したことから生ずる退職給付債務の拡大というリスクからは逃れることが出来る。いわば、リスクを許容範囲に収めることが可能になったということであろうか。
さらにメリットをあげるならば、確定拠出型企業年金がどうしても負わざるを得ない従業員への投資教育が、確定給付型の企業年金の一形態であるということで、不要になるということであろうか。
いずれにしても、キャッシュバランスプランは企業年金のありかたに、選択肢をひとつ付け加えたということができるのではなかろうか。