労働法規の運用に関して,行政と事業主の関係は貸し借りの関係と見ることができる。即ち,行政側が事業主に対し、ある一定の強制を加えるとき、代償として事業主に一定の権利を与えるか,一定の義務を免除するかというような関係である。しかし、この関係がサービス残業の摘発の場合は、まったく働かない。その場合、行政は事業主に代償を与えることなく,行政目的を達成しようとする。達成するためには、司法処分を下すこともためらわない。それはまさに、労働者にサービス残業の実態があるのであれば,どんどん申告してくれと言っているかのようでもある。その申告先は地元の労働基準監督暑である。裁量労働や時間外労働の自己申告制、労働基準法41条適用者、年俸制などによって、サービス残業を強要されている労働者は、その不正を改善させる絶好の機会と捉えるべきではなかろうか。
それに対する事業者の方としては、代償を伴わない行政通達などが出た場合,それはやがて事業主への行政圧力が強まることが予想されるものとして、即座に社内の法令遵守体制を見なおして,行政の介入に備えるべきであろう。