一企業内において、労働条件というものは同一であることを要求される。業務部門毎に格差があれば,企業秩序の維持を持つことが難しくなるからだ。しかし、現実には企業全体でみれば、業績の向上に貢献している部門とそうでない部門があることは疑いないことである。であるならば、事業者としては、業績のよい部門では労働条件を良くし,そうでない部門では労働条件を低下させたいところである。
持ち株会社制度というものは、事業者のそうした希望を実現させる力を持っている。親会社を持ち株会社として成立させ,部門毎の業務は傘下会社として独立させる。独立した会社の労働条件はそれぞれ独自に作成させるが,内容に格差があっても、それは独立企業間の問題であり,持ち株会社には関係ない。
こうして、労働条件の格差問題は一企業内では解決されることになるが、このことが社会全体の格差問題につながると,持ち株会社制度そのものが問題視されかねない。そして、格差社会の是正に持ち株会社制度の見なおしが求められたりすると,日本企業の労働条件問題は後退を余儀なくさせられることになる。