資本主義が円滑に機能するには、次ぎの三つの要素が必要である。
① 市場が存在するか否か。
② 存在するとしたら、その市場は開放されているか。
③ 市場が開放されているとしたら、その市場を構成する購買層に購買力があるか否か。
第一次世界大戦後のアメリカには、世界の金の半分以上が集まっていたというのであるから、アメリカそのものが大きな市場であったことは疑いない。しかしながら、そのアメリカにおいて市場が開放されているか否か、となると高い関税が示すように不充分であったと言わざるを得ないであろう。そして、購買力の問題についても、産業合理化の結果によってリストラされた労働者に対して、新たな雇用の場を提供してこなかったという意味で、多いに疑問があるといわざるを得ない。
となると、アメリカには確かに市場は存在していたが、その市場における購買層には購買力がなく、まったく市場としての価値がなかったということになる。そして、こうした構造的な問題は、国民大衆には知らされていず、知らされていない国民大衆はうわべだけの経済現象にのみ惑わされて、アメリカの永遠の繁栄を信じ、株式市場に投資を続けていたと解せるのではなかろうか。