アヘン戦争からアロー号戦争にいたるまで、敗戦の原因を辿ってみれば、官憲の腐敗に至るわけであろう。となれば、敗戦後の改革はいかに官憲の綱紀を立て直すかでなければならないはずである。しかし、清朝政府が行なったことは西洋諸国のように近代的な軍備を備え、兵の訓練を西洋式に転換することでしかない。ここには、官憲の腐敗的体質、私利私欲に走る傾向を改善しようとする意気込みはみられない。これでは、洋務運動が成果を挙げることは期待できない。
中国だけが文化国家であり、周囲の国々は皆、野蛮国であるというのが、中華思想の本質であろうが、そのような考え方を持つ限り、対等な立場で条約を結んだり、同盟を締結したりなどということは絶対にできない。なぜなら、条約や同盟は対等の立場を基本として成り立つものであり、その基本を根本から否定する中華思想ではありえないからである。しかし、時代は帝国主義である。帝国主義の時代で同盟を結ぶことができないというのは、国家として致命的であるといわねばなるまい。