エルバ島を脱出したナポレオンは、新しい政権をブルジョア的自由主義に基づくものとして規定する。タレイランとしては、こうした規定による政権であるならば、ナポレオンを法の外に置くと同盟諸国に宣言せざるをえない。なぜなら、タレイランはフランスを農業中心の国家と規定し,ブルジョア的拡大主義には反対しているからである。いってみれば、ナポレオンは退位以前と何ら変わっていないということであろう。これが、農民を支持基盤とすると規定されてしまえば、タレイランとしても反対しようがなく,法の外へという宣言もなされなかったであろう。いうならば、ナポレオンはこの時点で,重大な選択ミスを犯したことになり,自らを孤立化させてしまったといってよかろう。
では、この孤立化はワーテルローの戦いでナポレオンが勝利していたとしたら解消していたであろうか。解消するためには,何よりも、法の外へという宣言を取り消させる以外にはない。果して,同盟諸国がその宣言を取り消すことに同意するであろうか。同意するためには,ナポレオンが拡張主義を改め,フランス国内の統治に専念することしかないであろう。だが、戦勝によってブルジョアジーの支持を高めたナポレオンがそのような後退をするはずもなく,後退しない限り、法の外への宣言も取り消されることはない。
従って,戦いはどちらかが消耗しつくまで続くことになるが、フランス一国でそのような消耗戦に耐えられるはずもなく、やがて、降伏せざるを得なくなったことであろう。