「育児休業終了時報酬月額変更届」も「養育期間報酬月額特例申出書」も、被保険者が申し出ることによって手続きは始まる。そして、事業主を経由して事業所を管轄する社会保険事務所に提出されて被保険者としての手続きは終わる。
しかし、被保険者がまず申し出るについては、被保険者自身こうした制度があることを知っていてこそのものであろう。被保険者自身、制度のことを知らないのでは、申し出を行なうこと自体がありえない。とはいっても、「育児休業終了時報酬月額変更届」の場合は、それによって事業主負担の保険料も軽減されることになるから、被保険者本人が制度のことを知らなくても、事業主が知っていれば、申し出を促すこともありうる。
問題は、「養育期間報酬月額特例申出書」である。年金受給額が算定される場合、現行の低下した標準報酬月額ではなく、従前の低下する前の標準報酬月額で算定してもらえる特例についての申出書であるが、被保険者の年金額が増えようが減ろうが、事業主にとって関係のあるものではない。関係ないのであるから、制度のことを知ろうともしないし、知っていたとしてもわざわざ被保険者に申出書の提出を促すこともしない。それでは、被保険者はせっかくの制度の恩恵を受けることができなくなる。
事業所在籍中に制度のことを知ったのであれば、申出書を作成して事業主経由で事業所管轄の社会保険事務所に提出すればよい。しかし、事業所を退職したあと、こうした制度のあることを知った場合はどうなるのか。経由して提出してもらう事業主そのものがいない状態であるから、被保険者としては困ったことになる。
しかし、制度はそうした場合、被保険者自身で申出書を提出することを認めている。それも事業所管轄の社会保険事務所ではなく、住所地管轄の社会保険事務所でいいことになっているから、被保険者としての負担は軽い。とはいっても、これもやはり、制度のことを知っているという条件つきであることにかわりはない。