従軍慰安婦に関する朝日新聞の誤報問題である。誤報原因の一つに女子挺身隊と従軍慰安婦の混同があったとされている。特に、朝鮮半島から動員された女子挺身隊についての混同である。一部が慰安婦にされたというのであるが、それならば、女子挺身勤労令(勅令第519号)による法的扶助は受けていたのか、という問題を明らかにしなければならない。
そもそも、それまで強制的なものではなかった未婚女子による女子勤労挺身隊が、強制的な制度に移行したのは昭和19年8月23日の女子挺身勤労令によってである。この勅令によって勤労は奉仕するものから就職するものへと移行し、当然のごとく、健康保険や厚生年金法の適用を受けることになった。(昭和19年、労働者年金法は厚生年金保険法と改められ、女性も加入すことになる。改められた理由は労働者という言葉が社会主義を連想させるためであったといわれている。)
この厚生年金加入期間は厚生年金額にも反映され,裁定請求できるものではあるが、ただ、確かに勤務していたことの立証が難しい。理由は当時の厚生年金保険被保険者台帳や健康保険厚生年金保険事業所別被保険者名簿が戦災によって失われている事例が多いからである。結局、当時一緒に勤務していた同僚の証言や事業所の社史、工場記録などにより総合的に判断せざるを得なくなるのである。
以上のことから見て、昭和19年8月以後、女子挺身隊として勤労動員されていたのであれば、厚生年金保険にも加入していて、その記録が台帳や名簿に残されていなければならないことになる。朝鮮半島から動員されたとされる女子挺身隊もその名前や事業所名が台帳や名簿に残っていれば、軍需工場で働いていたという明白な証明になる。だが、その名簿や台帳がないとなると、確認作業ができない。そして、そういう事情を知っているものがいるとすれば、女子挺身隊に関する作り話はいくらでもできる。従軍慰安婦にされたというのもその一つではないのか、と疑ってもみる。