確定拠出」年金法という新しい企業年金法が成立したのは、2001年6月22日、施行は10月からであった。この法律を国会に上程したのは、自民党である。自民党が上程したということは、経営者側からの働きかけがあったとみるべきであろう。
しかし、こうした確定拠出年金法などという法律をつくって、新たな企業年金を始めなくても,既に企業は厚生年金基金や適格退職年金という企業年金をもっていた。しかも、その内容も企業にとって,税制面などで、結構メリットのあるものである。
にもかかわらず、企業がこのような新しい企業年金を求めたのは何故であろうか。新しい企業年金によって、企業により大きなメリットが出るいうのであれば,話は別であるが、この確定拠出年金法の中身を見れば,かえって、企業にとって負担になる部分もあるのである。
例えば,厚生年金基金や適格退職年金には加入員に対する忠実義務や法令遵守義務などというものはなかった。ところが、確定拠出年金法では事業主等の行為準則として、はっきり明記されている。(43条)つまり、常に、加入者の立場に立って運営しなければならないという受託者責任が、新たに課せられているのである。
従来の厚生年金基金では、事業主が代議員会に入って基金を主導できた。そしてそこには、加入員の立場に立ってなどという制約はなかった。適格退職年金では、事業主が一方的に信託や生保と契約を結び、一方的に給付水準を決めることができた。加入員の同意を得て(3条1項)、などという制約もなかったのである。
かようなフリーな立場を保証されながら、何故、事業主はあえて、新しい制約が加わることになる確定拠出年金の導入を求めたのか。
結論からいえば、企業経営者は、それほどせっぱ詰まっているのである。せっぱ詰まった原因をいえば、新しい国際会計基準の適用であり、その中に含まれている退職給付会計のためである。
では、退職給付会計とは何か。