ジェントリーを中心とするブルジョアジーにとって、議会至上主義は諸刃の剣である。確かに、王権からは解放されはするが、それは同時に、小農民への解放にまで及ぶ恐れがあるものであろう。そのようなことになれば、ブルジョアジーの階級的利益をも犠牲にしなければならない。
そうした事態を回避する方法は小農民等の選挙権に制限をつけるしかないであろう。しかし、そのようなことをすれば、小農民等の下位階級層から構成される水平派の支持を得ることはできない。水平派は既に、人民協約という政治綱領を公表し、人民すべてに選挙権を与えることを主張しているのである。
となれば、ブルジョアジーを中核とする独立派としては水平派に取引を持ち掛けざるをえない。取引とは、チャールズ1世の処刑である。もちろん、独立派にはその取引に成算はあった。それは独立派が長老派と分裂し、チャールズ1世からの反撃に独立派が窮地に陥った時、水平派の指導者ジョン・リルバーンが独立派と水平派の反目があったにもかかわらず、救援の軍を送ってくれたことがあったからである。つまり、独立派としては、水平派がなによりもチャールズ1世の存在を排除することを優先していると認識していたのではないか。
そうした支持があったからこそ、独立派の指導者オリバー・クロンウェルもチャールズ1世の処刑を決断できたのであり、その代償として第2人民協約によって、制限選挙をかちとることになる。
一方の水平派としては、チャールズ1世を排除するという目的は達成することができたが、その結果、議会に代表を送り発言するという成果を得られなかったのであるから、独立派との提携という選択が本当に正しかったかどうかという疑問の残るところとなった。