交通事故で被害を被り、死亡あるいは障害状態となると、健康であれば労働によって得られたはずの生涯利得が補償されることになる。これを逸失利益というが、その額を算定する場合、どのぐらいの金利を控除するのが適当であろうか、という裁判があり、14日にその最高裁判決が下った。
判決は、民法による法定利息5%を相当とするものであった。超低金利時代、この5%という控除率は大きく、だからこそ裁判になったのであるが、この判決のもたらす影響は労働者災害補償保険にも及ぶ。
労働者災害補償保険には、遺族補償年金(通勤の場合は遺族年金)、障害補償年金(同じく障害年金)という年金補償があるが、この年金を前払いで受けとることのできる前払一時金制度というものもある。例えば、障害1級なら給付基礎日額の200日分から1340日分まで200日刻みで請求できるし、遺族なら給付基礎日額200日分から1000日分まで200日刻みで請求できるというものである。
ところが、この前払一時金制度にも一定金利を控除して算定するという規定があるのであり、その金利は5%なのである。
そこに今回の最高裁判決が出たのでぁるから、その影響は大きい。仮に、5%という金利設定が違法であると判断されたのであれば、労働者災害補償保険法における前払一時金制度の控除利息も、そのままでは済まされなくなってくる。最高裁判決に追随するとすれば、控除利息を引き下げざるをえず、引き下げれば給付額が増大する。給付額が増大すれば、保険制度を健全に保つためには保険料を引き上げなければならない。保険料を引き上げれば、企業業績を悪化させる。
今回の最高裁判決は、そうした流れををすべて食い止めたのであるから、その影響はすこぶる大きいといわねばなるまい。