権力を掌握するのは官職である。唐代まで、その官職に就けるのは貴族だけであった。しかし、五代十六国時代を経て、宋の時代になると、貴族でなくとも科挙に合格したものも官職に就けることになった。ここに、新しい社会の支配層が形成されることになり、それにつれて思想、文化も変化してくることになる。その代表的なものが宋学である。
宋学は仏教にあって、儒教には不足していた論の部分を補強する役目を担って発展する。それによって、合理的な考え方が生まれてくることになるが、それは他方、生活規範としての律(仏教)礼(儒教)にも新しい規範をもたらすことになる。それこそが朱子学であり、朱子学において定められた生活規範が社会全体に影響を及ぼすことになっていく。そして、その規範性の強さが東アジア社会を停滞的な社会に固定化していくことになる。