宋王朝を成立させ、支えているのは有力商工業者であろう。政治改革に着手することになった王安石は均輸法や青苗法など新しい法律を次々に施行させていくが、その標的となるのは、こうした有力商工業者の不当な利益を制限することにある。当然、有力商工業者からの強い反対があり、王安石としては、その強い反対に対抗して、政権を維持していかなければならないわけである。その場合、王安石を支えてくれるものとしては、均輸法や青苗法で利益を受けることになる中小商工業者や零細農民と王安石の起用を決定した神宗ということになる。
しかし、この時代、普通選挙などというものは、もちろん存在しないのであるから、中小商工業者や零細農民の支持などというものは期待できない。となると、頼みは神宗からの信頼ということしかないのであり、そのことは強力であるともみえるし、心細いともみえるものであろう。
他方、王安石の政治改革によって、経済的打撃を被った有力商工業者と彼らの代表たる旧守派は、常に、王安石の政治的失脚を待ちうけている状態ということになろう。というようなことを考えれば、王安石の政治的立場はかなり不安定なものといわざるをえない。