大きな災害が発生した時、公務員や民間企業の従業員は救助作業や復旧作業に不眠不休で取り組まねばならない。当然、時間外労働という問題が生じてくる。時間外労働については、労使が協定を結び、就業規則に時間外労働を命じることができると記載したうえで、所轄労働基準監督署に届けることによって法的根拠が備わる、とされている。
しかし、大きな災害が発生した場合は、それだけでは対応しきれない。なぜなら、就業規則で時間外労働を命じることができると定める場合、具体的な理由を定めておかねばならず、その具体的な理由とは、受注が集中したためとか、季節的繁忙に対応するためとか、納期に間に合わせるためなど、要するに業務の都合や必要に関することばかりであり、被災による救助作業や復旧作業については具体的に定められていないからである。つまり、そのまま労働者に時間外労働や休日労働を命じていれば、法令違反になるのである。
そこで活用することになるのが、労働基準法第33条「非常災害、公務災害の必要による時間外労働」である。
これによれば就業規則に定めていない事項、即ち、災害その他避けることにできない事由によって、臨時の必要がある場合は、時間外労働または休日労働をさせることができることになっている。ただし、事前に所轄労働基準監督署長の許可がいることになっているが、事態窮迫のため許可を受ける暇がない場合は、事後に遅滞なく届け出ればよいことになっている。もっとも、その時間外労働または休日労働が不適切と認めらる時は、その後にその時間外労働または休日労働に相当する休暇または休日を与えることを命じられることになる。
今回の東日本大地震の場合、当然、この第33条が適用されようし、そのために時間外労働または休日労働を命じたりしても不適当とされることはあるまい。