人間国宝で歌舞伎役者の中村富十郎さんが亡くなった。享年81歳。遺族は妻47歳、長男11歳、長女7歳である。
国民年金法における遺族基礎年金の受給権者は幼少の子を持つ妻または子である。幼少とは18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあることをいう。とすれば、富十郎さんが国民年金の老齢基礎年金の受給者であったならば、妻または子は遺族基礎年金の受給権者になるということである。但し、子は妻が受給権を有するときは、その間、支給が停止されるから、受給するのは妻ということになる。問題は、富十郎さんが老齢基礎年金を受給していたか否かであるが、人間国宝になり、文化功労者にもなった方である。規定があるわけではないが、国民年金保険料を滞納していた方が、人間国宝や文化功労者になれるとも思えない。従って、国民年金法における老齢基礎年金は受給されていたものと推定する。
とすればその支給額であるが、妻に支給される額が792,100円、子の加算額が1人につき227,900円であるから、2人で455,800円、合計1,247,900円である。
高齢で亡くなった方の遺族に遺族基礎年金が支給されるというのは、それほど珍しいことではないかもしれない。しかし、遺族基礎年金は子が18歳の年度末に達すれば受給権が消滅するのであるから、その期間はせいぜい2,3年間の期間でしかないはずである。ところが、富十郎さんの遺族の場合、長女はまだ7歳であるから、この先まだ11年間も、妻が再婚しない限り、受給するのであるから、相当長いと言わざるを得ない。それもこれも、富十郎さんが74歳の時に、長女が生まれたことによるためであるが、このような例は、おそらく、遺族基礎年金制度が始まって以来のことではないか。