平成16年度の年金改正で創設された制度に「公的年金支給停止制度」がある。公的年金の受給者のうち、自主的に厚生年金などの受給辞退を申し出る制度であるが、制度実施は平成19年度からであったが、申し出た人は平成19年度で150人、平成20年度で96人でしかなかったという。
厚生年金などの公的年金は60歳に達した時点で、老齢基礎年金の受給権を有し、被用者年金加入期間が1年以上あると支給されることになっている。構成は報酬比例部分と定額部分から成るが,生年月日が昭和16年4月2日から昭和28年4月1日までの間にあれば,60歳からまず、報酬比例部分だけが支給される。定額部分については生年月日による。
そこで、国会議員のうち、今回の総選挙前の集計であるが、60歳以上の議員は何名いるかとなると、衆参合計で310名である。平成20年度の支給停止申し出者は96名でしかなかったのであるから、国会議員の中には議員歳費と公的年金の両方を受けていた人が相当多数いたことになる。国会議員として年金財政を憂えるのであれば、もっと多数の年金辞退者がいてもよさそうなものであるが、実態はそうではなかったらしい。
ちなみに、今回の総選挙の結果、衆議院議員に当選した人達の中で、60歳に達した人は17名いる。民主党では、平野博文官房長官、海江田万里氏、小宮山洋子氏他6名、自民党では鳩山邦夫氏、甘利明氏、菅義偉氏他3名、無所属中村喜四郎氏他1名。果して,これらの議員が年金の支給停止を申し出るか否か興味深いところである。
ところで、支給停止を申し出た人の人数を発表するのは社会保険庁である。ところが、民主党政権は行政官庁が独自に記者会見等を行うことを禁止すると言う。行うのであれば,政府の許可を得てからということになるらしい。とすると、年金の支給停止を申し出た人の人数も来年度からは発表されなくなるかもしれない。国会議員としては,国民の目を気にせずに、議員歳費と公的年金を受け取れることになるということか。