厚生年金基金や税制適格年金という確定給付型の企業年金を導入したとき、企業はもちろん金利は変動するものである、ということは十分に承知していたに違いない。しかし、右肩上がりの経済成長を不変ものと信じている限り、そのような変動はリスクとして実感することはなかったであろう。ところが、右肩上がりという前提が崩れると、そうはいかなくなった。とくに、退職給付会計が導入されるとなおさらである。
そこで、企業は対策を講じなければならなくなったのであるが、その際、年金資産の運用を企業が管理するという部分を、従業員各自の運用に委ねるという方法に転換したのが、確定拠出型の企業年金制度である。それに対し、拠出された年金資金に固定した金利を付与するという部分を、変動した金利に従って付与するという形に転換したのが、キャッシュバランスプランである。
しかし、企業にとって、いかにキャッシュバランスプランなどという制度を導入したからといって、肝心なのは、その制度に拠出した資金が課税対象から除外されるということである。課税対象から除外されるには、根拠となる法律がいる。それは、いささか面倒なことである。国会の審議も必要であるし、時間もかかる。
そこでとった方法が、確定給付型企業年金の一形態として、キャッシュバランスプランを認めるという方法である。これならば既に、確定給付企業年金法が成立しており、課税対象から除外されるという法廷根拠が整備されているということになる。従って、キャッシュバランスプランは、確定給付型の企業年金として認められたということになり、拠出される資金は確定給付型の企業年金に拠出されるということになる。