未支給年金を請求できるのは、生計同一要件のある配偶者、子、父母,孫、祖父母または兄弟姉妹である。生計同一要件のあるというのは、住民票が同じということである。では、その住民票が同じである家族がいないと未支給年金はどうなるか。それは、請求権者がいないということであるから,誰にも支給されないということになる。誰にも支給されないと,その分は国のものとなり、国は支払い責任を免れることになる。
請求権者がいないとは、どのような場合が想定されるか。一人暮しの年金受給者が死亡した場合がその典型的な例であろうが,その他にも、介護保険を利用して特別養護老人ホームに入所した場合も当てはまることになる。
介護保険において、施設介護を利用すると、住民票も移動させねばならない。特別養護老人ホームへの入所も施設介護であるから,当然,住民票を移動させねばならない。その際,特別養護老人ホームに入所するのは要介護者一人であり,従来、生計同一関係にあった家族が共に入所するわけではない。とすると、それは年金受給者にとって、生計を同一にする家族がいなくなるということであるから、もし、特別養護老人ホームに入所した年金受給者がそこで亡くなった場合,未支給年金の請求権者はいないということになる。
これを国の立場で見るとどうなるか。未支給年金そのものは1ヶ月もしくは2ヶ月で小額ではあるが,請求権者が多く集まると、その額は当然増大する。となると、介護保険の充実で介護施設の建設が今以上に進むと,請求権者のいない年金受給者が増えることになり,それはとりもなおさず、未支給年金として支給しなければならない年金額が軽減されるということになる。わずかではあるが、介護保険の存在は年金財政の負担削減のための効果を生むことになる。