外国に軍隊を派遣することは、コストの掛かることである。だからなるべく、そのようなことはしたくない。しかし、満州鉄道の経営は日露戦争の結果、獲得したものであり、いつまた、ロシアが条約を無視して奪い返しに来るか分からない。そのようなことが起こった場合、実力でロシアを追い返さなくてはならないのであるが、それができるのは軍隊しかない。だからどうしても、軍隊を派遣せざるをえない。
とすれば、軍の目的はロシアの南下を監視する事にあるはずであるが、反日意識の現地においては、役割はそれだけに留まらない。現地の中国人から日本住民を保護するという役割も担うことになる。しかしそれは、本来の目的とは異なるものであり、そうした目的のために軍が本国の参謀本部の統制を無視した行動をとったとしても、参謀本部としては制御するための法規制を用意していないということでもある。
しかも、現地の日本人住民から反日行動に対する断固たる処置を求められればなおさらであろう。その結果が、満州を混乱状態に陥れ、日本軍が軍事的に解決して治安を回復するという方針であり、それが柳条溝事件から上海事変、そしてついには満州国の建国へと向かっていくことになる。