ムッソリーニのファシスト党は議会で多数を取ったわけではない。にもかかわらず、組閣ができたのは、国王の大命を受けたからである。これは、大日本帝国憲法下における日本と同じである。ということは、当時のイタリアの憲法も大権が国王にあると定めていたのであろう。
ムッソリーニはこの大命を受けて立法権を行使する。その結果生まれたのが新しい選挙法であり、これによってファシスト党は議会の3分の2を制することになる。これに対して、議会は何の抵抗もできない。当時のイタリア憲法の下では議会は議決機関ではなく、単なる諮問機関でしかなかったのであろう。これも、日本と同じである。
ということを見てみると、日独伊三国同盟で議会で多数を制した結果、政権を担当するようになったというのは、ナチス・ドイツだけということになる。そのナチス・ドイツもドイツを戦争に引きずり込んでいったのであるから、議会制度が確立されているというだけで、すべてがよい結果に導かれるものではないということができよう。
しかし、そのことは、いいかえれば、ヴェルサイユ条約がいかに当時のドイツ国民を苛めていたかということでもあり、その破棄を訴えるヒトラーにドイツ国民が投票したのも当然という見方もできよう。そして、そのヴェルサイユ条約を押し付けたフランス、イギリスにも第二次世界大戦の責任はあるということになろう。