総裁政府にかわるものは、統領政府である。ナポレオンは、その第一統領である。第一であるから、第ニ,第三もあるわけであるが、それらは第一の顧問的存在であり,実態は大統領であるナポレオンの独裁である。独裁などといえば,民衆は拒絶するところであろうが,この場合、民衆とは革命で利益を得たブルジョアーと農民であり,ナポレオンが彼らの利益を保護することを保証するとすれば,独裁といえども拒絶する理由はない。その保護を明文化したものが、ナポレオン法典であるとすれば、その保護は益々強化されたと受け止めることができる。
とはいっても、ナポレオンとて不死ではない。ナポレオンが亡くなり,王制が復活し、元の政治体制に戻れば、彼らへの保証も取り消しにされ、それどころか王殺しの張本人として迫害を受けることになるかもしれない。とすれば、ナポレオンが健在のうちに、そのような王制復古が二度と起こらないように手立てを講じておかなければならない。
その手立てとは,ブルジョアや農民にとっては、ナポレオンを皇帝に就け、その地位を世襲化する以外にはない。かくして、ナポレオンは戴冠することになるが,それは、ナポレオンが望んだものでもあろうが、同時に民衆の要望でもあったということができるのではなかろうか。