公的年金を一元化するというのは、各公的年金間の不公平を解消しようというのが、その目的なのであろう。自民党案ではこの各公的年金を厚生年金と共済年金とみて、両者を統合することによって、一元化を実現しようとしている。一方の民主党案では、厚生年金と共済年金ばかりでなく、国民年金をも加えて一元化を図ろうとしている。当然、それならば、厚生年金や共済年金にみられる報酬比例部分も国民年金に導入することになるであろう。
しかし、厚生年金や共済年金には定年による退職というものがあり、定年後は年金だけが収入になるのに対し、国民年金の第一号被保険者である自営業者には定年というものがない。すると、第一号被保険者たる自営業者は自営業による収入と公的年金による年金という二つの収入源があることになる。
厚生年金の受給者が在職していた場合、在職老齢厚生年金制度が適用され、給与所得の多寡によって、一定額が支給停止になる仕組みがあるが、第一号被保険者たる自営業者は、そもそも厚生年金の加入者ではないのであるから、このような制度が適用されるはずもない。すると、第一号被保険者たる自営業者は、自営業による収入の他に、公的年金を一部支給停止されることなく全額を受けとれることになる。
仮に、在職老齢厚生年金に相当するような一部支給停止制度を第一号被保険者たる自営業者にも適用することになると、なによりもまず、第一号被保険者たる自営業者の正確な収入を把握しなければならない。厚生年金加入者に在職老齢厚生年金を適用できたのは、、加入者の正確な給与が把握できたからである。民社党は納税者番号制度の導入によって、それを可能にするといっているが、実現性には疑問がある。
となれば、民社党案は第一号被保険者たる自営業者を格別に優遇する制度といわねばならず、少なくとも、公平性という観点からみれば、自民党案の方に分があると見るべきであろう。