新しい考え方というものは、古い考え方に対比してあるものであろう。それが、単なる教養であるうちは、古い考え方の方も問題にはすまい。しかし、新しい考え方が実践を伴ってくると、古い考え方の方も警戒をせざるをえない。その警戒の段階で、古い考え方の方に新しい考え方に同調してくれるものがいれば、新しい考え方の方は弾圧を免れることができる。
1750年以降、フランスで啓蒙思想が実践力を帯びてくるにつれて、ディドロの百科全書の出版を古い考え方の方から援助したポンパドゥール夫人や出版長官マルゼルブは、そのような同調者の人々であったのであろう。