育児休業期間の社会保険料(厚生年金、健康保険)は免除される。それは本人負担分ばかりではなく、事業主負担分も含めてのことである。となれば、事業主は進んで育児休業取得者の申出書を管轄の社会保険事務所に提出するであろう。そして、今回、年金制度の改正で、その期間は従前の1歳に達する日の翌日が属する月の前日までから、最長で3歳に達する日の翌日の属する月の前日までに延長された。もちろん、事業主負担分を含めることは従前のとおりである。
さらに、3歳に達する前に育児休業を終了し、もとの職場に復帰したが、給与が下がった場合、標準報酬月額の改定を本来の規定から外れても認めることにした。本来の規定とは、固定的賃金の変動によって、標準報酬月額に2等級以上の差が生ずることであったが、それを1等級の差が生じても認めることにしたのである。この報酬月額変更の届が認められるのは子が3歳に達するまで。この場合、標準報酬月額が低下するのは、保険料も低下することでもあるので、事業主は進んで「育児休業等終了時報酬月額変更届」というものを管轄の社会保険事務所に提出するであろう。
だが、問題は次の新しい制度である。
やはり、子が3歳に達する前に育児休業を終了し、もとの職場に復帰したが、給与が下がってしまった場合、子が3歳に達するまでの養育期間は、育児休業を開始した月の前月の標準報酬月額とみなすという制度である。従前の高い標準報酬月額とみなしてくれるのであれば、後の厚生年金の受領額で有利に反映されることになる。
しかし、被保険者の受領額に有利に反映されることなどは、事業者にとって関係ないことである。このみなし制度の適用を受けるためには、「養育期間標準報酬月額特例申出書」というものを事業主を経由して、管轄の社会保険事務所に提出しなければならないが、自分に関係のない、こうした届け出を事業主がすすんで行なうかは疑問である。
こうした一連の改正は「次世代育成支援策」の一環として行なわれるらしいが、このみなし制度適用への届け出だけをみれば、詰めを欠いているかのような印象を受ける。