確定拠出年金の従業員に対するセールスポイントの一つに、年金資産の持ち運び、即ち、ポータビリティーがあるが、果して、本当にポータビリティーは従業員に対するセールスポイントとなっているのであろうか。本当にセールスポイントとなっているのであれば、、確定拠出年金はもっと早いスピードで拡大してもよさそうであるが、現状は遅々としたものでしかない。
ではなぜ、セールスポイントとならないのであろうか。そもそも、確定拠出年金の導入は、従来の確定給付型の企業年金が資産運用環境が悪化したことから生じる積み立て不足問題を解消することから唱えだされたものである。しかし、そうした理由で確定拠出年金を導入したいとうのは、企業側の一方的な都合と受け取られかねない。企業側の一方的な都合では、導入決定が労使の合意に委ねられている確定拠出年金では労働者の同意はえられない。
そこで、労働者のメリットとなることを改めて提示しなければならなくなったのであり、ポータビリティーの有無というのは、そのとき、後から慌てて示されたメリットという印象を免れない。こうした印象では、セールスポイントとしてはいかにも弱い。確定拠出年金がもう一つ勢いがつかないのは、そうした理由があるのではないか。